シックなコーディネートを華やかにするきれい色のバッグ

重さはわずか300gで、「重い」という印象の強い革バッグのイメージを覆してくれるこちら。小さいながらも、長財布や500mlのペットボトルも収納可能な、心強い一品です。

台東区にお店を構えるMUZICA VITA（ムジカヴィータ）は革問屋業を行う株式会社石井から生まれたオリジナルブランドです。コロナの蔓延など、厳しい状況に置かれることもある中で、20年オリジナルブランドを継続しています。このインタビューでは、革問屋だからこそできる製品開発やブランドが目指す今後について、店長の石井百合さんにお話を伺いました。

ー株式会社石井の会社の歴史を教えてください。

創業は1899年で、100年以上、革を取り扱う事業を行ってきました。現在、私の弟が4代目を務めています。
株式会社石井は元々は機械のモーターベルトとして使用される革の提供から始まっています。その後、戦後にゴムが普及したことで、衣服やコートなどに使用される羊の革を中心に取り扱うように。そして次に鞄や靴での革需要が高まったことから、牛革の取り扱いが中心になりました。

ー革の問屋業を中心としてきた中で、自社ブランドを立ち上げられた経緯も教えていただけますか。

自社ブランドを始めたのは、2004年のこと。メンズのバッグブランドからのスタートでした。MUZICA VITA（ムジカヴィータ）を立ち上げたのが、その2年後になります。会社として成長し続けるためには、常に新しいことをし続ける必要があると考えていました。

当時は問屋が自社ブランドを始めるのはまだまだ珍しい時代。私たちにとっても大きな挑戦でした。問屋業とは全く異なる知識が必要なことに戸惑うことも多かったのですが、私たちが見つけた革がバッグという形になるまでを、一貫して手掛けることで、「こういうものがあったらいいのに」というアイデアを形にすることもできるようになりました。得られるものが大きかったので、大変でしたが挑戦してみてよかったです。

ー問屋業でありながら、自社ブランドを持つメリットは何だと考えられていますか。

素材の知識があることです。通常であれば、素材屋にある中からどの素材を使用するか決めなければいけませんが、私たちは自分達で新たな素材を見つけたり、作ったりすることができます。実際に、革に艶が足りない場合は加工屋さんと一緒に新たなバッグの素材を作っています。革の開発から行えるのはバッグをつくるにあたって、大きな強みです。

ー製品開発や製造において大事にされていることがあれば教えてください。

職人さんによって得手不得手があるため、どの商品をどの職人さんに作ってもらうかはよく考えて依頼しています。例えばバッグよりも財布を作るのが得意な職人さんもいます。そのため革の特性とデザインに合わせてベストな職人さんをマッチングするのは大事だと考えています。

また、年に2回、イタリアで開催される革の展示会に必ず参加して、新しい素材を探しています。常に新しいことに挑戦するためにも、最先端の場に足を運び、新しい情報や新しい素材に触れることは欠かせません。

ー革製品を販売する中で、お客様からの声などで印象的だったものはありますか。

「これ本当に革なの？合皮じゃないの？」と聞かれたことが印象に残っています。特にエナメル革の素材に関してはそのようなお声をよくいただきます。

革といえば、茶色のイメージや使えば使うほど表情が変わる素材というイメージを持っている方が多いのですが、私たちが取り扱っている革には明るい色の素材や長く使っても変化しない素材が多くあります。
長く使って革を育てたい方もいれば、ずっと買った時の綺麗な状態を好む方もいるので、それぞれが好みに合わせて、革製品を楽しめたらと思っています。

ー今後についても教えてください。目指していることや、挑戦してみたいことはありますか。

MUZICA VITAを通して、革のイメージを変えていきたいと思っています。具体的には革製品といえば、手入れが大変、重い、濡らしてはダメ、といったイメージを変えていきたいです。これはブランド立ち上げ当初から変わっていません。

革製品は少し購入するにはハードルが高く、気を張って使う物ではなく、毎日気軽に使ってもらえる物だと私たちは思っています。今後もいい意味で「革っぽくない革製品」を作っていくので、ぜひ革製品の使いやすさをMUZICA VITAを通して多くの方に体感してもらえたら嬉しいです。