東京生まれのファッション雑貨。台東区周辺の企業による、こだわりの靴・バッグ・財布・ベルト・帽子などを販売します。

革のダイヤモンド コードバーンの革小物

革の中でも最高級と評されるコードバンは、滑らかで美しい艶を放ちます。使うごとに、さらに艶やかに変化していくので、その経年変化を楽しみながら育てる革小物です。

【インタビュー】株式会社三和袋物

台東区にオフィスを構える三和袋物は、1935年創業の革小物メーカーです。上質な革を使った美しいお財布やキーケース等を作り続けているブランドは多くありますが、長い間、百貨店や専門店からお声がかかり続け、お客様に満足してもらえるものづくりを続けられるメーカーとなると、そう数は多くありません。今回は、代表の深山さんに、三和袋物のものづくりに対するこだわりをお聞きしました。

ー革小物を幅広く作られているのが印象的ですが、まずは今日に至るまでの会社の歴史を教えていただきたいです。

深山さん:始まりはベルト職人だった祖父が立ち上げたベルトを製造する会社でした。当時は革に限らずビニールや合成皮革など様々な素材を加工していたようです。その後、父の代になるとお客様からのリクエストを受け、小銭入れを作るように。財布作りが中心となってきたのは昭和36年以降のことです。職人さんも採用し、財布作りに徐々に専念するようになっていきました。

ー今では財布だけでかなりの種類があるのですね。

深山さん:お客様からのご要望を聞きながら作っていった結果、ラインアップがどんどん増えていきましたね。その時々の売れ行きによってラインアップは変更していますが、まず革の種類だけで20種類はあるので、財布だけでも現在70種類以上ご用意しています。

ーそれだけのラインアップを用意するのは大変ではないですか。

深山さん:同じような革小物を取り扱っている企業はたくさんいらっしゃるので、多品種を作り続けることで他社と差別化しています。

実は一言で財布といっても、2つ折り財布と長財布、がま口付財布とでは、作るにあたって全然違ったスキルが求められるため、たくさんのラインアップを用意するのは簡単ではありません。ですので職人それぞれの得意な技術を活かした商品開発を日々意識しています。

ー売上の9割以上はOEMと聞いています。お客様のリクエストに答え続けるだけでも大変な中、それでも自社ブランドを販売する理由は何なのでしょうか。

深山さん:ものづくりの原動力になると思っているからです。自社ブランドの開発をする中で、何ができて何ができないのかが明確になります。そして試行錯誤して開発を行うことで成長していくことができます。また、自社ブランドを通して自社の強みや技術力をアピールできたり、自分たちが純粋に良いと思ったものを世の中に出すこともできるのも自社ブランドを持つ良さですね。

ーOEM、自社ブランドに関係なく、商品開発や生産において大事にされていることはありますか。

深山さん:大事にしていることは2つあります。1つ目は丁寧に作るということ。そして2つ目は買いたいと思っていただけるような美しい仕上がりにすることです。どちらも当たり前のことだと思われるかもしれませんが、決して簡単なことではありません。様々な要望やリクエストをお客様からいただきますが、何を作るにおいてもこの2つだけは必ず意識しています。

ーお財布以外にも、ゴルフバッグやスコアカードケース、ボール入れなど、あまり見た事がないユニークなアイテムも並んでいて驚きました。こういったニッチなアイテムはOEMではまずオーダーが来ないものだと思うので、自社ブランドならではですね。

深山さん:これは本当に自分たちの思う「あったらいいね」を形にしたものですね。まだ世の中にあまりないアイテムだからこそ、作り甲斐がありますし、自分では買わないにしろ、ギフトでもらうとうれしいアイテムだったりしますよね。

お財布もゴルフグッズも、本当に細かい仕様にまで拘っているのがわかります。このアイテムを作るには、実はお財布とはまた違う技術が必要なんだそう。職人さんそれぞれの得意どころを把握して、ものづくりを依頼する事によって、完成度の高い商品が生み出せているのかもしれません。

ー最後に、メッセージがあればお願いします。

深山さん:コロナで外に出かける機会が減ったことから革小物を購入する人も減り、革小物メーカーとしては厳しい日々が続いています。やっと少しずつ元の日々に戻るのではないかと言われるようになりましたが、まだまだどうなるかわからない中で注文数が安定しない日々が続きそうです。

深山さん:先が見えない中ではありますが、お客様に「こういうのが欲しかった!」
と言っていただけるような良いものを変わらずに丁寧さと綺麗な仕上がりを意識して作り続けていく予定です。この記事を読んでいただいた方には、使えば使うほど味も艶も出る三和袋物の革小物をぜひ一度使ってみていただけたら嬉しく思います。

ここ数年は、これまで経験したことのない厳しい状況にあったとお話しされていましたが、そんな状況でも、お客様が満足してくれる一品を作り続ける事なんだと話す姿が印象的でした。要望のあった商品は、まずは研究し尽くして、それを実現できる職人さんと徹底的に話し合い、納得のいく形にする。言葉にすると簡単だけど、なかなか実行することが難しい事をくり返しながら生まれる革小物たち。使い込んでいくと、より他との違いが実感できる一品だと思います。

 

Profile株式会社三和袋物カブシキガイシャサンワフクロモノ

ベルト作りの職人である深山和三郎氏が1935年に台東区元浅草で創業。戦後は革財布メーカーに転じ、1970年代からいち早く自社ブランドやライセンスブランドの生産をはじめる。中国にも1980年代に進出し、生産拠点を確保。国内生産と海外生産を組みあわせた、コストパフォーマンスの高い財布を生み出している。