東京生まれのファッション雑貨。台東区周辺の企業による、こだわりの靴・バッグ・財布・ベルト・帽子などを販売します。

小さくても使いやすさをあきらめない財布

ワンアクションで中身を取り出せる!収納力と使いやすさをしっかりと実現したミニ財布

【インタビュー】acte aider

2022年の秋にクラウドファンディングサービスMakuakeで話題となったのが、株式会社駒屋による自社ブランドacte aiderのミニ財布です。株式会社駒屋の取締役である西村剛史さんによると、自社ブランドの立ち上げは2011年から進んでいたものの、OEM事業との両立の難しさからなかなか開発が進まなかったそう。このインタビューでは、自社ブランド立ち上げの経緯から、acte aiderの今後までお話しいただきました。

コロナ前から感じていた自社ブランドの必要性

ーまずは現在に至るまでの会社の歴史を教えてください。

1950年に先代が須藤商店としてビジネスを始め、今年で創業73年を迎えました。戦前から戦中にかけての軍事用革靴製造の名残で、浅草界隈では革産業が発展していきました。また墨田区も豚革等が生産されていたことから、この土地に根付いた産業として革製品の製造を行っていたのです。須藤商店の頃は、製造した革小物を浅草橋の問屋街にまで自転車で届けていたと聞いています。

ー自社ブランドを始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

OEMとODMを中心に行っている中で、価格競争に陥っていることに課題を感じていたのが理由のひとつです。人件費と物価の高騰でコストが増える一方、単価を上げることが難しく、利益幅が減少。そんな中で、自社ブランドを持つことで消費者と直接繋がり、利益幅を獲得する動きも必要だと感じていました。

またOEMの場合、製品デザインの主導権はお客様にあります。そのため私たちが使いやすいと思った製品の機能や構造も設計への反映が難しく、自分達が使ってほしいと思う製品を作れないことにモヤモヤ感を覚えることがありました。自社ブランドであれば、それも解消されるという思いから、立ち上げを決めたのです。

ー確かに御社には、かなりの数の金型が並んでいました。それを見ただけで、様々なブランドの商品を作られていて、相当なノウハウをお持ちだというのがわかります。ですが、OEMの場合、制限が発生する場合がありますね。

私自身、システム工学やコンピューターサイエンスを学び、IT企業で勤めた後、駒屋に入社しました。異業界から来ていたため、より消費者に近い目線から製品を見ることができ、ここを工夫したらもっと使いやすくなるのに、といった感想を持つことが多く…異なる視点で物事を見られる状態で入社したことは、ブランドの立ち上げにはプラスに働いたと思います。

OEM事業との両立とブランドコンセプトへのこだわり

ー実際にブランド立ち上げに動き出したのはいつ頃の話でしょうか。

着手し始めたのは2011年です。当時はまだECプラットフォームが充実しておらず、自社サイトの立ち上げなどから動く必要がありました。
IT企業での経験を活かして社内のデジタル化を2008年から3年程かけて行い、その後ブランディングやサイトの立ち上げなどに取り組み始めた流れになります。

ーブランド立ち上げは順調に進みましたか。

OEM事業は9月からクリスマス、新年、バレンタイン、ホワイトデー、フレッシャーズとイベント続きで忙しい時期が続きます。本来であれば並行してブランドの立ち上げを進め、閑散期に自社ブランドの製造と販売ができたらよかったのですが、OEM事業との両立がうまく行かず、自社ブランドの開発が進まない状況が5年程続いてしまいました。

その後、コロナが流行したことでOEM事業に急ブレーキがかかりました。お客さまのお店が閉まり、在庫が減らなくなったことで私たちメーカーへの発注の必要性が停滞しました。その穴を埋める仕事を創り出すためにも、改めて自社ブランドの必要性と重要性を感じ、2020年から自社ブランドの再注力が始まったのです。

ーその自社ブランドの名前はacte aiderですが、この名前にはどのような意味が込められているのでしょうか。

フランス語でacteは活動、aiderは支援するという意味を持ちます。ブランドのコンセプトを考えた際、誰かの活動を助ける革製品を作り続けたいと思ったことから、ファッション業界の最先端であるフランスの言葉でacte aiderを選びました。

強みを活かして価格以上の価値を提供し続ける

ーacte aiderの財布は左利きの方用にも作っているのが特徴的だと思いますが、これはどういった経緯で生まれたのでしょうか。

誰かの活動を助けるとのブランドコンセプトの「誰か」の部分にできるだけ多様性を持たせたいと考えていました。その検討過程で「ヨーロッパで使われているガマ口金具には右手で開けづらいものがある」との話をたまたま聞き、利き手によって使いやすさが変わる観点に気付きました。

その着想から、構造が左右非対称の製品は右利き用と左利き用の両方を提供することにしました。近年は、キャッシュレス化の加速と小さい鞄で出かける方が増えたことをきっかけにミニ財布の開発を行いました。もちろんこのミニ財布も例外なく、左利き用も製作しました。

ありがたいことにこの財布はMakuakeを通してたくさんの反響をいただくことができました。コロナで人々のライフスタイルが変わり、従来の商品が従来の方法では売れなくなるようになっていますが、きちんと市場調査を行い、必要とされているものをその時代にあった場所で販売すれば売れるということを実感した出来事だったと思います。

ー具体的にどのような反響があったのか教えていただけますか。

目標金額20万に対して、230万を達成しました。コメントもたくさんいただいたのですが、印象的だったのは「届いた時に箱を開けたら、本当にカードが入るか疑う程、小さかった」といったお声。驚くくらいのサイズ感を実現できたのは目論見通りでしたね。

OEMでは製品に対する評価をダイレクトに聞くことができなかったので、とても新鮮で、やってみてよかったと思いました。

ー自社の強みが製品にもうまく反映された結果ですね。

手間はかかりますが、中小規模のものづくり企業だからこそできる立ち回り方かもしれません。私たちの強みは製品をゼロから開発できることです。そして手間がかかる、作りにくい設計は職人さんにとっては大変ですが、作りにくい=誰にでも作れない、真似されにくいという価値があると思っています。その強みを活かした製品開発を今後も続けていきたいです。

ー最後に、今後の展望を教えてください。

催事などのイベントを通して、ミニ財布の需要があると同時に、まだまだ長財布を愛用されている方がいらっしゃることも知りました。次はそういう方に向けた長財布の開発を進めたいと考えています。

また、使いやすいと思ってもらうことに加えて、長く使っていただくには「使っていて違和感がない」ことも大事だと思っています。原材料や人件費の高騰などまだまだ課題は山積みですが、デジタルの力をうまく活用し、皆さんに納得いただける価格で、価格以上の価値を持つ製品を届け続けたいです。

 

Profile株式会社 駒屋カブシキガイシャコマヤ

株式会社 駒屋は、ファクトリーブランド acte aider(アークトエディー)を手がける1950年創業の革小物製品メーカーで、ゼロからの製品設計を得意としています。OEM・ODMで長年培ったノウハウを活かして、オシャレで使いやすく高品質な革製品をお届けできるよう心がけています。